NOZOMI PAPER Factory

NOZOMI PAPER Factory

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    たった一枚の紙が仕事をつくるはなし。


    役割のないもの

    「雑貨屋」とは不思議なお店だ。「雑=その他いろいろ」と解釈すれば、結局のところ何屋なのだろう? という疑問がふと沸き起こる。なくても生活に支障はないけど、あったら嬉しいくらいの雑貨を集めていると、時々「雑貨屋の役割とはなんなのか?」というループに陥ることがある。何を売っても良いし、何を売れば良いのかわからなくなりやすい。

    そんなモヤモヤ感を抱えながらお店づくりに携わっていたのだが、ある工房と出会ったことをきっかけに、その悩みが晴れつつある。それは宮城県南三陸町の「NOZOMI PAPER Factory」だ。

     


    福祉作業所との出会い

    「NOZOMI PAPER®︎(ノゾミペーパー )」とは、障がいのある方々が利用する「のぞみ福祉作業所」で作られる紙のこと。牛乳パックや新聞紙などを水で溶かし、もう一度紙漉(す)きをしてポストカードなどに再生するリサイクルペーパーを製造している。

    のぞみ福祉作業所は、元々は南三陸町の海産物をパック詰めする内職を行なっていた。震災をきっかけに支援が集まる中で、紙漉きをするための大型機械を寄贈された。紙を溶かした原料を木枠で濾(こ)す製造法で、紙作りの基本中の基本だ。小学生の頃に体験したことのある方も多いだろう。

    作業所がちょうど紙漉きを始めたタイミングで、東京から南三陸町に復興支援プロジェクトで訪れた「HUMORABO(ユーモラボ)」と出会う。”福祉とあそぶ”をテーマに、夫婦で活動するデザイナーユニットだ。HUMORABOは、薄くて綺麗な紙漉きをしようとしていた作業所に対して、むしろ厚手で”耳”もついていた方が良いのではないかと提案。それに活版印刷を施し、NOZOMI PAPER®︎と名付けてブランディングをしていった。今では東京のお店でショップカードとして採用されたり、牛乳パック以外にも新聞紙を用いたり、コーヒーの出がらしやB品の珈琲豆で染色するなど、活動の幅を広げている。

     


    それぞれができること

    僕ら東北スタンダードマーケットチームは2018年、渋谷ヒカリエでの展示がきっかけでNOZOMI PAPERの存在を知った。インターネットで情報を得て、東京まで見に行こうかと思ったが、わざわざ仙台から東京に行くよりも直接現地に赴いた方が良いと直感して、南三陸町の施設を訪ねた。

    のぞみ福祉作業所は、アットホームな雰囲気の施設だった。作業の工程を見せていただくと、牛乳パックを分解する人、紙の原料を溶かす人、紙を漉く人、乾かす人、選別する人、活版印刷する人が分業されており、想像以上に作業工程が多かった。

    そして出来上がった紙には「耳」がついていて、一枚一枚が異なる表情を持っていた。その姿には、僕らが普段紹介している手仕事のものと近しい愛らしさが宿る。

    そのまま意気投合して、2018年11月に東北の郷土玩具を活版印刷したシリーズ「KAPPAN POSTCARD―東北の手仕事と福祉―」をリリース。施設利用者の中で、絵を描くことが好きな方に郷土玩具をドローイングしていただいた。

     


    廃材に役割を与える仕事

    そして2020年、NOZOMI PAPER®︎では新たなプロジェクトが始まろうとしている。それは、地元仙台で毎年廃棄されてしまう「七夕飾り」を再利用した「TANABATA PAPER(仮)」を作るプロジェクトだ。

    七夕飾りには成型をするために針金が使われている上、和紙や化学繊維が入り混じり、分解・分別をしないとリサイクルができない。その手間をかけてまでリサイクルできないという現状があり、産業廃棄物扱いになってしまっている。

    しかし、NOZOMI PAPER®︎の製造工程を当てはめると、作業所の中に「紙をバラすのが得意な人」がいることで、七夕飾りの再生が可能になった。約2カ月をかけて、ひたすら花飾りを分別する作業をしている。

     

    「たった一枚の紙を作るまでに、施設のみんなが関わっている」ことがNOZOMI PAPER Factoryの一番の長所だ。一般的な会社の場合、仕事のために適した人を求人・採用する。一方で福祉作業所では多様なタイプの人が共同で働いている。だからこそ、人から発想して、仕事を”創る”ことが必要不可欠だ。一枚の紙を作る仕事は、全員の仕事を創り、そして役目を終えた七夕飾りの次の役割を作る。

    あんなにも綺麗なのに、例年、一夜にて「解体」されてしまう七夕飾り。それを丁寧に分別していく様子を見て、冒頭で触れた僕自身の悩みも晴れていくようだった。ポストカードほど雑貨屋に置いてありがちなアイテムはないが、NOZOMI PAPER®︎は雑貨でありながらも「個」を認めていくための紙。これが売れることで社会に多様な仕事が生まれ、認められていく個性があるのであれば、それは喜ばしいことだ。

     

     

     取材・写真:岩井 巽(東北スタンダードマーケットディレクター)