【東北工芸製作所】 私たちの“今”を彩る玉虫塗。
仕事の息抜きに、さあ、いつもの喫茶店へ。
そんな機会もすっかりと少なくなってしまいました。まだ雨の匂いが残る、蒸し暑い部屋の中でパソコンと向き合いながら夏の到来を待ち続ける日々。乾いた喉を潤したい、そんなときに、心もちょっぴり癒やされたら。「玉虫塗(たまむしぬり)」は、宮城県仙台市に伝わる伝統工芸品。銀粉をまき、その上から染料を加えた透明な漆を塗り上げるという独特の漆芸の技法が使われています。光の加減で変化する色合いや輝きが特徴的な玉虫塗。東北工芸製作所では従来から作られてきた赤や緑のあでやかな商品のほか、仕事や食事、くつろぎのときなど日々の生活に寄り添う新たなシリーズ「TOUCH CLASSIC(タッチクラシック)」を展開。こちらはさまざまな空間や場面にも馴染みやすく、くらしの中で使いやすい黒をベースにしたラインナップ。玉虫塗で表現された宮城の山並みと波打つ海をイメージした美しく繊細なグラデーションのグラスは、使われるシーンだけでなく、そそぐドリンクやお酒によっても印象が変わっていきます。
自然を想いながら喉をお水で潤す。お酒の場面ではスタイリッシュに。日本酒をそそぐとその黒は静かな存在感を示し、カフェラテにすれば二色だったグラデーションがほんのりと柔らかなものに変化していきます。素地は松徳硝子で作られた、「うすはり」。その透明感はグラスの銀と黒の曲線の滑らかさを際立たせます。敷居が高いと思われがちな伝統工芸品を、日常的に楽しみ、使うことができる。東北工芸製作所の玉虫塗は、日々をあでやかに彩ってくれます。
観る工芸から、使う工芸へ
玉虫塗は、1928年(昭和初期)に設立された国立工芸指導所で生まれました。ここでは海外のデザイナーも関わって工芸デザインの指導を行った日本で初めての機関。それまでの漆器にはない、あでやかに照り返す発色と輝きがタマムシの羽根に似ていることで「玉虫塗」と名付けられ、日本を代表する工芸品として、世界に輸出されました。タマムシを連想させる赤や緑のデザインが多く、献上品や記念品として親しまれました。東北工芸製作所では当時の工芸指導の理念を受け継ぎ、伝統工芸品としてただ飾るのではなく、現代のくらしの中で触れて楽しむことのできる日用品としての玉虫塗を作り続けています。
東北工芸製作所について
宮城県仙台市の「東北工芸製作所」は、日本で初めての工芸デザイン指導期間である国立工芸指導所と東北帝国大学(現在の東北大学)の支援を受けて、1933年に設立。「玉虫塗」を国内・海外向けに製作し続け、宮城を代表する伝統工芸品に育て上げました。献上品や記念品として親しまれてきましたが、伝統的な品々を作る一方でテーブルウェアやステーショナリーとして生活を彩るシリーズ「TOUCH CLASSIC」をスタートさせるなど、現代のライフスタイルに合うような新商品の開発に取り組んでいます。
技術・素材について
木や金属、ガラス、樹脂などの素地を使用し、漆塗りの工程の途中で銀粉をまく。これが玉虫塗の独特の技術であり、奥行きのある艷やかな風合いを生み出します。そしてまいた銀粉をなめらかにするように磨き、透明感のある色うるしを塗っていく。東北工芸製作所では創業以来、時代に合わせた日用品を生み出し続けてきました。現代のライフスタイルに合わせて従来の伝統技術の高度化を目指し、飾られるだけでなく、コーティングを行い耐久性に優れ日常使いにもぴったりな玉虫塗の製作にも挑戦しています。
飾るだけではもったいない。「使う工芸」を目指し、時代に合わせて変化を続けてきた玉虫塗。黒というシンプルな色合いに挑戦した「TOUCH CLASSIC」は、光のあたり方や使い方でさまざまな表情や色合いを見せてくれます。宮城の自然を表現したというやわらかな曲線の内側で、揺れる水面が透明感を際立たせ、夏をあでやかに、そして涼しげに彩ってくれる玉虫塗。伝統工芸品でありながら、日用品としての玉虫塗と過ごす夏をお楽しみください。