【MAMUANG×TOHOKU製作秘話】土笛

弘前市は青森県の西側に位置し、弘前藩の城下町として発展してきた歴史があります。下川原焼(したかわらやき)もそんな歴史の中で生まれました。伊万里の技法を習得した弘前藩士が御用窯として日用雑器を作りつつ、寒さが厳しい冬季中はお殿様の命で子どもたちのために土人形を製作。この土人形製作が200年以上続く伝統工芸品となったのです。

下川原焼土人形の土笛たち。東北の他の産地と比較すると小型の人形が多く、庶民に愛されてきたことがうかがえる

下川原焼の窯元である阿保正志さんは2001年より故・高谷清治さんに師事し、下川原焼土人形の製作を開始。2017年にはその功績が讃えられ、青森県伝統工芸士に指定されました。正志さんの作る下川原焼は、伝統を重んじながらもどこか柔らかく、眺めているとやさしい気持ちになってきます。もし正志さんの手でマムアンちゃんの人形を作っていただけたら、どんなにかわいいものになるだろう……そう夢見て、2021年の秋。依頼をしてみようと決めたのでした。

正志さんは超が付くほどのアナログ派で、携帯電話もパソコンも使われません。もし引き受けていただけたとして、県をまたぐのが簡単ではない昨今どうやってやり取りを進めたら良いかな?という気持ちがほんの少しよぎりますが、青森に金入の社員いっぱいいるんだからどうにかなるだろ、という気持ちでご一報を(どうにかなるだろ、と思える社風がありがたい)。感触としては、あまり芳しくない……というか、ご依頼差し上げたタイミングがちょうど干支人形の最盛期に差し掛かっており、もともととってもお忙しい時期なのです。ですが、とりあえず今回の企画について詳細をお送りして検討していただくことに。

お送りした企画書の一部

ほどなくしていただいたお返事、なんと引き受けて下さるとのこと……! というのも、2021年春から娘の七海さんが修業をされていて、七海さんがマムアンちゃんのことを知ってくださっていたのです。しかも、七海さんを介してメールでのやりとりも可能とのこと。タイミングの巡りあわせに心から感謝しつつ、どのような形のマムアンちゃんにするかをタムくんと検討していきます。そして、タムくんから届いたアイデアスケッチがこちら。

足の裏を吹き口にして、マムアンちゃんがおーい! と呼びかけているようなデザインです。かわいい……! 正志さんにお送りして、下川原焼で実現可能かを確認していきます。すると、このままのデザインだと少し難しいかもしれない……とのこと。置いた際のバランスや吹き口の設計の問題、あとは、工程上とがったデザインよりもつるんと一体化したデザインの方がやりやすいなどの条件があることがわかってきました。タムくんのアイデアを最大限に生かしつつ実現するために、相談を重ねていきます。

立体のイメージをしていただくためお送りしたカネイリスタッフによるスケッチの一部

うつ伏せの形はなかなか難しく、座った形で進めていただくことに決定。頬に手を当てたマムアンちゃんのポーズはタムくんのアイデアそのままに、実際に粘土で形のサンプルを製作していただきます。以下、少しずつブラッシュアップされていく様子をご覧ください。

第一弾のサンプル。少しぽっちゃりした印象が気になる。大きさ比較の栄養ドリンクに正志さんのお忙しさを思う

タムくんより、吹き口をお尻ではなく髪の毛にできないか?との案

やり取りを重ねてこちらが完成版のサンプル! だいぶコロンとした印象に。

形のサンプルが完成したら、型ぬき→乾燥→素焼き→地塗り→彩色、という工程を重ねていきます。

乾燥中のマムアンちゃんたち

色についても検討していく。タムくんの案でお口の中も靴と同じ赤にすることでよりポップな印象に

色が決まったらどんどん絵付けを進めていただく。マムアンちゃんメリーゴーランド!

何かを相談しているように見えるマムアンちゃんたち。阿保さんの工房、コロナウイルスの猛威が落ち着いたらぜひ遊びに行ってみてくださいね。

そして、ついに完成したマムアンちゃんの土笛。ひとりひとり表情が異なり、やさしい音色で鳴らすことができます。200年前と同じ音なのかなと思うと感慨もひとしおです。正志さんと七海さん、親子二代のコンビネーションで生まれるこれからの下川原焼土人形にもぜひご期待ください!

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