【MAMUANG×TOHOKU製作秘話】起き上がり人形

岩手県盛岡市の南部に位置する紫波町(しわちょう)に、コシェルドゥさんの工房はあります。コシェルドゥさんの活動は、岩手という土地に足をつけながらも世界に開かれている商品群がとても魅力的です。漆塗りや張子などの工芸技術を使ったバッグやアクセサリーは、その技術が持っている特性を存分に生かしたものとなっています。

コシェルドゥさんのバッグ。漆塗りによる耐水性と、張子の技術だからこそできる自由な形が唯一無二の魅力を放っている。

その技術を生かして製作されている「起き上がり人形」も大人気の商品。豊かな筆致と成島和紙のあたたかみ、そして何よりもユーモアあふれる発想で見る人を笑顔にしてしまうアイテムです。コレクションされている方も数多くいらっしゃいます。

起き上がり人形の一部。干支の動物や猫、縁起物、節句の桃太郎や金太郎など、様々な種類がある。

これまでにもコラボレーションアイテムを手掛けられていて、カネイリでもオリジナルの起き上がり人形をお願いして製作していただいたことがあります。2021年の秋にマムアンちゃんのコラボ企画が立ち上がり、ぜひお願いしたい!とすぐに考えました。しかしそこには、大きな懸案事項がありました。それは実店舗での先行発売時期が1月だということ。お正月は干支物の販売があり、一年の後半というのは作り手の皆さんにとって一番の繁忙期なのです。とはいえこの企画はカネイリミュージアムショップ6の10周年を記念するもので、1月27日の開店記念日をずらすわけにもいかず…ダメ元でお願いしてみることにしたのでした。

コシェルドゥの澤藤さんからほどなくお返事をいただきます。ドキドキしながらメールを開きました。


・・・個人的にここ数年すっかりタイにはまって、
今年は行けませんでしたが年に一度、バンコクやチェンマイ旅行を楽しみにしています。
そんな折に、このようなお話しいただけてとても嬉しく思います。

現在は、とにかく干支の納品でバタバタしておりますので、
すぐにサンプル製作とはいかないのですが、
納品まではまだお時間ございますので、少しずつ進行していきたいと思います。・・・

こんなことってあるのでしょうか!なんとも嬉しいお返事でした。タムくんにも引き受けていただいたことを伝えると、さっそくアイデアスケッチが送られてきました。

くびれたひよこのような形が実現できるかどうか、コシェルドゥさんに相談していきます。コシェルドゥさんの起き上がり人形は基礎となる土台の部分があり、そこに紙粘土で肉付けをして形をつけていくのですが、あまり肉付けが多くなるとバランスが崩れて起き上がらなくなってしまうそう。

工房の様子。下段が全ての元になる土台で、上段が肉付けをしたもの。

タムくんのスケッチに近づけるためにはかなりの肉付けが必要なため、どこまで近づけられるか…というお話。でも、できる範囲で挑戦してみます!と心強い言葉をいただきます。

そして、季節は冬へ。干支物の製作でご多忙の中、一回目のサンプル画像が送られてきました。

冬の清廉な空気が伝わってくるサンプル画像。

マムアンちゃんのトレードマークである髪型、ばっちり表現されています!画像で見るとわかりづらいですが、表面は弧を描いています。なのでタムくんのアイデアスケッチのように足元と地面をくっつけるというのは難しそう。この中でできることを整理していって、再度タムくんからスケッチをいただきました。

体以外の部分はすべて髪の毛として表現してほしいこと、今回はまゆげのないイラストでおねがいしたいということ。この二点がタムくんからの要望です。ここからコシェルさんには、何度も試作を繰り返していただきます。それに対してタムくんも、OKなラインとNGなラインの線引きを細かく監修してくださいました。

試作を重ねていく。左がコシェルドゥさんからのもの。右がそれを受けてタムくんの返答(動画での指示を切り抜きしたもの)。絵付けと本体のバランスがなかなか難しい。

 

 

ひとつとして同じ形のない土台の上で、どうやって線引きをしていくのか。年末年始もやり取りは続いた

やり取りを重ねて1月9日。ついにタムくんからのOKが。

 右のものが最終版。

晴れて量産体制に入っていただきます。底面には力強く「マムアン」と筆文字を入れていただくことに決定。



どのような環境でマムアンちゃん人形が生まれているのか、コシェルドゥさんがお送りくださった工房の様子をご覧ください。

青空の下、のびのびと乾燥中。

作業場の様子。絵付けされるのを待っている起き上がり人形たち。

起き上がり人形は、倒れても起き上がる姿から前向きなパワーが連想されます。何も考えていないように見えて力強い心根を持っているところが、タムくんが描くマムアンちゃんの世界とかなり似ている、と思っています。お迎えした方がお部屋の片隅で微笑んでいるこの子と目が合って、少しでも力が湧くような瞬間があったら嬉しいです。

 

タムくんに確認のため送った先行販売分の一部。並べて見るとコマ送りのよう。どんな子がお手元に届くかもお楽しみに!
<MAMUANG×TOHOKU>特設ページ