【湯気のある時間】手のひらに、食卓に。東北の手仕事のぬくもり。

朝晩の空気がひんやりしてくると、あたたかな飲みものや、湯気の立つ食卓が恋しくなります。今年の秋は、手のひらで包む器や、食卓を囲む道具など、東北の手仕事とともに、湯気のある時間を楽しんでみませんか。

今回ご紹介するのは、漆や木、焼きものなど、東北の素材と技から生まれた器や道具たち。注いだ湯気がふわりと立ちのぼるまでの、ほんの数秒。その時間を愛おしく感じさせてくれるのは、作り手の手の跡が残る道具ならではです。シーン別に、お気に入りの一品を探してみてください。


手のひらで包む朝の一杯に

◎樹ノ音工房|鎬マグ カラー

朝いちばんの一杯は、できるだけ気負わずに楽しみたいもの。樹ノ音工房の「鎬マグ カラー」は、福島県会津美里町で作られる会津本郷焼のマグカップです。「鎬(しのぎ)」とは、カンナで彫る縦縞模様のこと。

手彫りならではの柔らかな表情と、すっと並んだストライプが、やさしい色合いの器にリズムを添えています。3色展開なので、気分や季節に合わせてお気に入りの一色を選べます。直径約11cm×高さ約6.2cmのたっぷりした大きさで、電子レンジにも対応。使いやすさとあたたかな風合いを大切に、産地で日々手作りされている普段使いの器です。


◎松永窯|大堀相馬焼 二重湯のみ

もう少しゆっくり、熱いお茶を味わいたい朝には、松永窯の「大堀相馬焼 二重湯のみ」を。大堀相馬焼は、福島県浪江町の大堀地区で生まれた焼きもので、「走り駒」「青ひび」「二重焼」という3つの特徴を持っています。

走り駒は「左馬」とも呼ばれ、「右に出るものがない」という意味から縁起がよいと親しまれてきました。

なかでも二重焼は、入れたお湯が冷めにくく、熱いお湯を注いでも手に熱さが伝わりにくいという技法。大堀相馬焼にしかない、珍しいものだそうです。器全体には「青ひび」と呼ばれる細かなひび割れが地模様となって広がり、そこに相馬藩の御神馬を手描きした「走り駒」が駆けています。容量は約100ccで、ゆっくり味わうのにちょうどよい大きさです。


食卓を囲む夜のひとときに

◎秋田・川連塗 寿次郎|川連塗 小町椀

湯気といえば、やはり汁椀。味噌汁やお吸いものを注ぐなら、漆の器がおすすめです。秋田・川連塗 寿次郎の「川連塗 小町椀」は、秋田県湯沢市川連で受け継がれてきた川連漆器の椀。国指定の伝統的工芸品で、800年以上の歴史があります。

羽反椀を少し小ぶりにして、縁の反りが唇にやさしく当たるように作られました。低い高台で安定感があり、重ねても高さが出ないので収納もしやすい椀です。漆の器は陶磁器やガラスに比べて軽く、熱いものを注いでも手に熱さが伝わりにくいのも魅力。最終仕上げの塗りが厚い川連漆器は、使い込むほどに色ツヤが増していきます。「良い物を大事に使う」という作り手の思いが、毎日の食卓にそっと寄り添ってくれます。


◎安比塗漆器工房|安比塗 4寸汁椀

岩手県八幡平市を中心に作られる安比塗の「4寸汁椀」。漆器は断熱性が高く、あつあつのご飯をよそっても手に伝わる温度がほどよいので、汁椀としてはもちろん、ご飯茶碗のように使うのも素敵です。

安比地区を含む北東北一帯には、縄文時代からウルシの木が多く自生し、日本有数の漆の産地として知られてきました。その恵みを生かして、生活に根ざした漆器が作られてきたのだそうです。見た目の印象より軽く、乾いたご飯粒や油汚れも落としやすいので、毎日の食卓にも気兼ねなく取り入れられます。


◎わにもっこ|森のあしあと 鍋敷き 青森ヒバ

湯気の立つお鍋を食卓に運ぶ季節には、鍋敷きもひとつ新調したくなります。わにもっこの「森のあしあと 鍋敷き」は、青森県大鰐町の木工工房が手がける青森ヒバの鍋敷き。ツキノワグマ、ノウサギ、ホンドタヌキ、ニホンカモシカなど、青森の森で暮らす6種の動物たちの足跡が、まるで鍋敷きの上を歩いたかのように彫られています。

表面にはあしあと、裏面にはそれぞれの動物がいるという遊び心も。食卓の真ん中にそっと置くだけで、白神の森の空気が運ばれてくるようです。工房名の「わにもっこ」は、大鰐の「わに」と木工の「もっこ」から名づけられました。


外で味わうひとやすみに

◎Holz|kasane kop

湯気のある時間は、家の中だけのものではありません。盛岡市のHolzが、岩手県の木地師さんと試作を重ねて生み出したのが「kasane kop」です。昔ながらの喫茶店や食堂で見かける、どこか懐かしいコップの形をフラットな目線で見直し、木で作りました。

山桜とイタヤの2種類の木から選べ、温かい飲みものも冷たい飲みものも使える日常のコップです。軽くて機能的なので、山やキャンプなどアウトドアでも重宝されているそうです。ぐい呑みサイズのminiは、通常サイズの内側にきれいに入れ子で収まります。水筒の温かいお茶を、秋の景色の中でゆっくり注ぎ分ける。そんなひとやすみにも、木のコップはよく似合います。

従来のkasane kopと径をあわせて制作されたkasaneシリーズに『kasane plate』が登場。

それぞれ蓋のように上に乗せることも、コースターのように下に敷くことも可能です。また、単品で豆皿としても活躍する小さなプレートです。

 

東北の手仕事とともに、湯気のある時間を

東北スタンダードマーケットは、東北の工芸品や郷土芸能を取材・発信する「東北STANDARD」の活動から生まれたお店です。2011年に取材を始め、2016年に仙台パルコに店を構えました。漆や焼きもの、木工品。ひとつひとつの背景には、東北の職人さんたちが大切にしてきた技と物語があります。

湯気といえば、鉄瓶で沸かすお湯もまた格別。そのお話は、冬の特集ブログで改めて。
この秋は、立ちのぼる湯気を眺めながら、東北の手仕事を手のひらで感じてみてはいかがでしょうか。いつものお茶の時間や食卓が、少しだけ特別なものになるはずです。